固定金利のメリットは、なんといっても「金利が変わらず、返済額がずっと一定であること」です。住宅ローンを検討する際、「変動金利のほうが金利が低くてお得では?」と思う人も多いでしょう。
しかし、長期的な安心感や家計の見通しを重視するなら、固定金利には大きな魅力があります。
固定金利とは、借入期間中の金利が変わらない住宅ローンのこと。
借入当初に決めた金利が最後まで続くため、金利上昇による返済額の増加リスクを避けられます。
「将来の金利変動に不安を感じる」「安定した支払いで計画的に返済したい」という方にとって、固定金利は安心して選べる選択肢です。
この記事では、
- 固定金利と変動金利の違い
- 金利が一定で返済額が変わらない仕組み
- 固定期間選択型と全期間固定型(フラット35)の違い
をわかりやすく解説します。
仕組みを理解することで、「自分にはどの金利タイプが合っているのか」が明確になるはずです。安定したマイホーム計画を立てたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
固定金利とは?住宅ローンにおける基本的な仕組み
住宅ローンを検討する際、多くの人が悩むのが「固定金利」と「変動金利」のどちらを選ぶかです。特に、固定金利は“安定した返済”が最大の特徴であり、将来の金利変動に左右されない安心感があります。
まずは、固定金利の基本的な仕組みを理解し、変動金利との違いを整理していきましょう。
固定金利の定義と変動金利との違い
固定金利とは、借入時に決めた金利が、返済期間中ずっと変わらない住宅ローンのことです。
一方で、変動金利は市場金利(短期プライムレートなど)の動きに応じて半年ごとに金利が見直されるため、返済額が将来的に増減する可能性があります。
たとえば、固定金利で年1.3%、変動金利で年0.5%のローンを選んだ場合、固定金利のほうが初期の支払いはやや高くなります。
しかし、今後金利が上昇したとしても固定金利では返済額が変わらないため、長期的には安定性を重視した選択肢となります。
つまり、
- 「月々の返済額を少しでも抑えたい」人は変動金利
- 「将来の金利上昇リスクを避けたい」人は固定金利
という違いで選ぶとわかりやすいでしょう。
金利が一定で返済額が変わらない仕組み
固定金利の最大の特徴は、借入時に決定した金利が完済まで固定されるという点です。そのため、借入後に市場金利が上昇しても、月々の返済額は変わりません。
たとえば、3,000万円を固定金利1.3%・35年ローンで借りた場合、月々の返済額は約9万3,000円です。
仮に将来、変動金利が1.0%上昇したとしても、固定金利なら返済額が上がらず、家計の見通しを立てやすいのがメリットです。
反対に、金利が下がっても返済額が変わらないという点はデメリットにもなります。
しかし、住宅ローンは長期にわたる契約であり、「安定して返せるかどうか」が最も重要です。毎月の支出を一定に保ちたい人に向いているのが固定金利だといえます。
固定期間選択型(金利固定10年など)と全期間固定型(フラット35)の違い
固定金利には、大きく分けて2つのタイプがあります。
それが「固定期間選択型」と「全期間固定型」です。
固定期間選択型は、借入から一定期間(例:10年、20年など)だけ金利を固定するタイプです。たとえば、「固定10年型」なら、最初の10年間は金利が変わらず、その後は再び変動金利か、再固定金利を選択する仕組みです。
初期の金利が全期間固定より低く設定されているため、当面の返済を安く抑えたい人に向いています。
一方、全期間固定型(代表例:フラット35)は、完済まで金利が固定されるタイプです。借入から返済完了まで金利・返済額が一切変わらないため、長期の安定性を重視する人に最適です。
特にフラット35は国の住宅金融支援機構が関与しており、保証料や繰上返済手数料が無料など、利用しやすい点も特徴です。
| タイプ | 固定期間 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 固定期間選択型 | 一定期間(例:10年) | 初期金利が低く、途中で見直し可能 | 当面の返済を抑えたい人 |
| 全期間固定型(フラット35など) | 返済期間全体 | 完済まで金利が変わらない | 長期の安定性を重視する人 |
固定金利は、「安心を買う住宅ローン」ともいわれます。
将来の金利上昇を気にせず、家計の安定を重視したい人にとって、非常に有効な選択肢です。
固定金利のメリット:安定と安心の返済計画が立てられる
住宅ローンは数十年にわたって返済が続く長期契約です。
その中で、固定金利が選ばれる最大の理由は「安定性」と「安心感」にあります。将来の金利変動を気にせず、一定の返済額をキープできることは、家計管理のうえで大きなメリットです。
ここでは、固定金利を選ぶことで得られる3つの主要なメリットを紹介します。
金利が上がっても返済額が変わらない安心感
固定金利の最も大きなメリットは、金利が上がっても返済額が変わらない安心感です。
たとえば、変動金利で0.5%だったものが将来的に1.5%へ上昇した場合、月々の返済額は1万円以上増えるケースもあります。しかし、固定金利なら借入時の金利が完済まで変わらないため、金利上昇による負担増を心配する必要がありません。
この「返済額が一定」という特徴は、特に以下のような家庭に大きな安心をもたらします。
- 教育費や生活費の支出が多い子育て世帯
- 共働きで将来のライフイベントが多い世帯
- 将来の収入変動が予測しづらい個人事業主
変動金利では「金利が上がったらどうしよう」と不安を感じる人も多いですが、固定金利なら家計の見通しを立てやすく、安心して暮らしを設計できるのが魅力です。
長期的な資金計画を立てやすい
固定金利は返済額が変わらないため、長期的な資金計画を立てやすいのも大きなメリットです。たとえば、「教育費」「老後資金」「車の購入」「リフォーム費用」など、将来の支出をあらかじめシミュレーションしやすくなります。
変動金利の場合、将来の金利動向によって返済額が増減するため、10年後・20年後の支出見通しを立てるのが難しくなります。
しかし固定金利なら、毎月の支出が明確なため、家計のバランスを長期的にコントロールしやすいのです。
特に、共働き家庭や子育て世帯にとっては、「住宅ローン+教育費+生活費」を同時に管理する必要があります。
その際に返済額が一定であれば、安心して貯蓄や投資の計画も立てられ、無理のないライフプラン設計が可能になります。
将来の金利上昇リスクを回避できる
固定金利を選ぶもう一つの大きな利点は、将来の金利上昇リスクを回避できることです。
住宅ローンは最長で35年に及ぶ長期契約です。現在の低金利が今後ずっと続くとは限らず、景気や金融政策の変化によって金利が上昇する可能性も十分にあります。
たとえば、借入時に変動金利0.5%だった人が、20年後に金利1.5%へ上昇した場合、総返済額は数百万円単位で増えることもあります。
しかし、固定金利を選んでいれば、借入時の金利がそのまま続くため、金利上昇局面でも返済額は変わりません。
つまり、固定金利は「将来の不確実性を回避する保険」のような存在です。
短期的には変動金利よりも金利が高く見えるかもしれませんが、長期的なリスクを回避できる安心感という“価値”を得られるのが、固定金利の強みです。
固定金利は、「安定した暮らしを守るためのローン」といえます。
返済額の変動に左右されないからこそ、長期のライフプランを安心して描くことができるのです。
固定金利のデメリット:初期コストと金利水準の高さに注意
固定金利には、安心して返済できるという大きなメリットがありますが、一方で注意すべきデメリットも存在します。
特に、金利水準の高さや借換えの難しさなど、長期的なコスト面で変動金利より不利になる可能性もあります。
ここでは、固定金利を選ぶ際に知っておきたい3つのデメリットを具体的に見ていきましょう。
変動金利よりも初期金利が高い
固定金利の最大のデメリットは、変動金利に比べて初期金利が高いことです。
たとえば、2025年時点の住宅ローン金利を比較すると、
- 変動金利:年0.3〜0.6%台
- 固定金利(全期間型):年1.2〜1.8%台
と、1%前後の差があるケースが一般的です。
この差は、35年ローンなどの長期契約では総返済額に大きく影響します。
例えば3,000万円を借りた場合、金利が0.5%違うだけで総返済額が約300〜400万円変わることもあります。
固定金利は「金利が上がっても返済額が変わらない」安心感を買う仕組みですが、その安心の代わりに“保険料”のような形で金利を上乗せしているイメージです。そのため、「少しでも月々の返済を抑えたい」という人には、変動金利の方が魅力的に感じられる場合もあります。
借換え・繰上げ返済のタイミングが難しい
固定金利は、借換えや繰上げ返済のタイミングが難しいというデメリットもあります。
というのも、固定金利では「一定期間、金利が変わらない」という契約上の特徴から、途中で条件を変更する際に手数料や違約金が発生する場合があるためです。
たとえば、借入から数年後に金利が下がった場合でも、固定期間中に借換えを行うと「固定金利解除料」が発生することがあります。
また、繰上げ返済をしても、返済期間が短縮されるだけで金利そのものは下がらないため、利息の軽減効果が限定的なケースもあります。
特に「固定期間選択型(例:固定10年)」の場合、固定期間が終わる前に繰上げ返済を検討すると、手数料の負担が大きくなることがあるため注意が必要です。
固定金利を選ぶ際は、「どのくらいの期間で返す予定なのか」を事前に明確にしておくことが大切です。
金利が下がっても恩恵を受けられない
固定金利のもう一つのデメリットは、市場金利が下がっても返済額が変わらないという点です。
たとえば、借入後に金融緩和政策などで金利が引き下げられた場合、変動金利であれば自動的に金利が下がり、月々の返済額も軽減されます。
しかし、固定金利の場合は契約時の金利がそのまま適用されるため、金利低下の恩恵を受けられません。
つまり、将来的に金利が下がる局面では、固定金利利用者のほうが支払い総額が多くなる可能性があります。
実際、過去10年以上続いている日本の低金利環境では、「変動金利を選んだほうが結果的に得をした」というケースも少なくありません。
とはいえ、金利がどう動くかを正確に予測することは誰にもできません。
固定金利を選ぶ場合は、「金利が下がっても気にせず安定を重視する」という考え方を持っておくと、後悔せずに済むでしょう。
固定金利は、安心感と引き換えにコストを負担するローンといえます。
短期的な金利差だけを見ると不利に感じることもありますが、「長期の安定性」を最優先にする人にとっては、非常に価値のある選択肢です。
固定金利が向いている人の特徴
住宅ローンを選ぶ際、「変動金利」と「固定金利」どちらが自分に合っているか迷う人は多いでしょう。
固定金利は、金利が上がっても返済額が一定で安心できる一方、初期金利が高めというデメリットもあります。そのため、全ての人に向いているわけではなく、ライフスタイルや収入の安定性によって適性が分かれます。
ここでは、固定金利を選んだほうがメリットを最大限に活かせる人の特徴を3つ紹介します。
収入が安定しており、長期的な返済を見据えている人
固定金利は、安定した収入があり、長期的な返済計画を立てやすい人に向いています。
なぜなら、金利が一定で返済額が変わらないため、将来の家計見通しを立てやすく、長期のライフプランと連動させやすいからです。
たとえば、公務員や大企業勤務のように、毎月の収入が安定している人であれば、固定金利の「一定の返済額」に対して無理なく支払いを続けられます。
また、転勤・昇進・子どもの進学など、ライフイベントの変化を見越しても返済計画を立てやすく、長期の安定を重視する家庭にぴったりです。
一方で、収入が不安定な自営業やフリーランスの場合は、毎月の返済額が固定されることが逆に負担になることもあります。安定した収入基盤を持つ人こそ、固定金利の「予測できる安心感」を最大限に活かせるといえるでしょう。
将来の金利上昇リスクを避けたい人
固定金利は、金利が上昇するリスクを避けたい人にとって理想的な選択です。
現在の日本は歴史的な低金利時代が続いていますが、将来的に物価上昇や金融政策の変化によって金利が上がる可能性は十分あります。
たとえば、金利が1%上がるだけで、3,000万円の35年ローンでは総返済額が数百万円増えることになります。
変動金利ではその影響を直接受けますが、固定金利であれば金利上昇後も返済額は変わらず、家計が安定します。
特に、教育費や老後資金の積立など、「今後の支出が増える見込みがある家庭」にとって、返済の安定は大きな安心材料になります。つまり、「金利が上がるかもしれない」という不安を感じる人にとって、固定金利は“リスクを回避する保険”のような存在なのです。
共働きや子育て世帯など、家計の安定を重視する人
固定金利は、家計の安定を重視する共働き世帯や子育て世帯にもおすすめです。
教育費や生活費、住宅ローンなど支出が多い時期でも、返済額が一定であれば家計管理がしやすくなります。
たとえば、子どもが小さいうちは教育費が少なくても、将来的に高校・大学進学で費用が増加します。
そのタイミングで金利が上昇すると家計を圧迫するリスクがありますが、固定金利なら返済額が変わらないため、生活設計を崩さずに済みます。
また、共働き家庭の場合も、出産や転職などで一時的に収入が減る可能性があります。そうした変化に備えて、返済額を固定できることは精神的にも大きな支えになります。
つまり、「毎月の支出を安定させ、家計を長期的にコントロールしたい」という世帯ほど、固定金利の恩恵を受けやすいのです。
固定金利は、「安定」「安心」「計画性」を重視する家庭に最適なローンタイプです。将来のリスクを最小限に抑え、家族の生活を長期的に守りたい人にとって、固定金利は確実で信頼できる選択肢といえるでしょう。
固定金利と変動金利を比較 ― どちらを選ぶべき?
住宅ローンを検討する際、多くの人が迷うのが「固定金利」と「変動金利」のどちらを選ぶかという点です。
どちらにもメリットとデメリットがあり、“どちらが得”というより、“どちらが自分に合っているか”で判断するのがポイントです。
ここでは、返済額・金利上昇リスク・選び方の基準を具体的に比較していきます。
月々の返済額と総返済額の違い
固定金利と変動金利では、同じ借入額でも月々の返済額と総返済額が大きく異なります。
たとえば、3,000万円を35年ローンで借りた場合の目安を比較してみましょう。
| 金利タイプ | 金利(年率) | 月々の返済額 | 総返済額(概算) |
|---|---|---|---|
| 変動金利 | 0.5% | 約7.6万円 | 約3,170万円 |
| 固定金利 | 1.3% | 約9.3万円 | 約3,920万円 |
変動金利の方が金利が低いため、毎月の返済額は1万7,000円ほど安く、総返済額も約750万円少なくなります。
この差を見ると、変動金利の方が魅力的に感じるかもしれません。
しかし、注意すべきは「この金利が35年間続くとは限らない」という点です。変動金利は半年ごとに見直されるため、将来的な金利上昇によって返済額が増える可能性があります。
金利上昇シナリオでの比較(例:1%上昇時の差)
では、もし将来的に金利が上昇した場合、どのような影響があるのでしょうか。同じく3,000万円を借入した場合、変動金利が1%上昇すると返済額は次のように変化します。
| シナリオ | 金利 | 月々の返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|---|
| 現在(0.5%) | 0.5% | 約7.6万円 | 約3,170万円 |
| 上昇後(1.0%) | 1.0% | 約8.5万円 | 約3,570万円 |
| 上昇後(1.5%) | 1.5% | 約9.3万円 | 約3,920万円 |
つまり、金利が1%上がるだけで月々の返済額が約9,000円増加し、総返済額では約750万円の差が生じます。このように、変動金利は「今は安いが、将来のリスクが大きい」という特徴があります。
一方、固定金利なら借入時の金利が変わらないため、金利上昇後でも返済額は一定のままです。長期的に見ると、固定金利の方が結果的に安定した家計運営を実現できるケースもあります。
「安心を取るなら固定」「低コストを狙うなら変動」
固定金利と変動金利は、それぞれ「安定」か「コスト重視」かで向き不向きが分かれます。
固定金利は「安心を買うローン」。金利が上昇しても返済額が変わらないため、家計を安定させたい人や、将来の金利上昇に不安を感じる人に向いています。
変動金利は「コストを抑えるローン」。当初の金利が低く、短期的には支払額を減らせるため、数年以内に繰上げ返済を予定している人や、金利変動に柔軟に対応できる人に適しています。
選ぶ際の判断基準は以下の通りです。
| タイプ | 向いている人 | 特徴 |
|---|---|---|
| 固定金利 | 家計の安定を重視したい人 将来の金利上昇が不安な人 | 返済額が一定で安心、長期の安定性に優れる |
| 変動金利 | 短期で返済・繰上げ返済を考えている人 リスクを取ってコストを抑えたい人 | 初期負担が軽く、低金利の恩恵を受けやすい |
つまり、「安心を取るなら固定、低コストを狙うなら変動」という選び方が基本です。
どちらが正解というわけではなく、「自分のライフプランとリスク許容度」に合わせて選ぶことが、後悔しない住宅ローン選びのポイントです。
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固定金利は「安心を買う」選択
住宅ローンの固定金利は、金利上昇リスクを避けたい人にとって最適な選択肢です。
変動金利に比べて初期金利は高めですが、返済額が一定のため、将来的な金利変動や経済状況の変化に左右されず、安心して長期の返済計画を立てることができます。
「金利が上がったらどうしよう」という不安を抱えるより、「上がっても大丈夫な仕組みを選ぶ」ことが、安定したマイホーム計画への第一歩です。
もちろん、固定金利にもデメリットはあります。
初期金利が高い分、短期的には負担が増える場合もありますが、デメリットも理解したうえで自分のライフプランに合わせて選ぶことが重要です。たとえば、「子どもの教育費が増える時期でも返済額を変えたくない」「将来の収入変動が読めない」など、安定を重視する家庭にこそ固定金利はフィットします。
そして、何より固定金利は、長期的な安定と安心を重視する人にとって最も堅実な選択肢です。
住宅ローンは、ただ“安く借りる”ものではなく、“無理なく返し続ける”ことが目的です。
金利の変動を気にせず、家族の未来を見据えたマイホーム計画を立てたい方は、固定金利という安心の仕組みを検討してみてください。







